前回より、所得税基本通達(以下、「所基通」)59-6に関する通達の改正の背景・改正内容などをお伝えしております。今回は本通達の改正に至った事案の概要や争点をお伝えして参ります。
✧ 改正に至った事案の概要
A社の代表取締役であるBは保有するA社株式を配当還元価額(1株当たり75円)でC社に譲渡しました。その株式譲渡年にBが死亡したことからBの相続人は配当還元価額を基に所得税の準確定申告を行ったところ、税務当局は、株式譲渡時におけるA社の時価は類似業種比準価額(1株当たり2,505円)であり、譲渡価額が譲渡時の時価の2分の1に満たないことから、所得税法(以下、「所法」)59条1項2号に規定する低額譲渡に該当するとし、時価による譲渡があったものとみなして更正処分等を行いました。
この更正処分等に対してBの相続人が訴訟を提起し、第一審では納税者敗訴の判決が、第二審では納税者勝訴の判決が下されました。これに対して税務当局の上告を受けた最高裁は、原判決を棄却し、高裁に差し戻す判決を下しました。
✧ 事案の争点
財基通では株式取得者の取得後の議決権割合によって、支配株主に適用される原則的評価方式(類似業種比準価額)又は少数株主に適用される特例的評価方式(配当還元方式)のいずれかを用いて未上場株式の評価をすることとされています。
所基通59-6の(1)では、財基通188(1)に定める「同族株主」に該当するか否かは、株式を譲渡した個人の譲渡直前の議決権数により判定することを条件としている一方で、少数株主の判定(財基通188の(2)から(4))に関しては読み替えの規定はありませんでした。この点に関し、納税者側は財基通188(2)から(4)の少数株主の判定において読み替えの規定がないことから、相続や贈与の場合と同様に譲受人の譲受後の議決権割合で判断すべきと主張しました。一方、税務当局は所得税法の趣旨に従い、財基通188の少数株主の判定について譲渡人の譲渡直前の議決権割合によるべきであると主張しました。
上記のように本事案は、所法59条1項2号の低額譲渡に該当するか否かにあたり、所基通59-6が準用する財基通株主区分の判定を行う際の解釈及びその判定に基づく譲渡時の時価について納税者と税務当局で争われたものです。
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