決算書読み方Check
決算書の読み方能力 レベルチェック
「粗利益とは何か」「会社の良し悪しを判断するには何を見たら良いか」「繰延資産とは何か」「有価証券の時価評価はどのように行われるのか」。
基礎的なレベルから、やや高度な質問まで、会計に関する知識を確認する問題をご用意致しました。
「会計は難しくてわからない」という方にも、「もうそんなことは知っている」という方にも、ぜひ問題に挑戦して、決算解読力に磨きを掛けていただきたいと思います。
初級編
1.会社の実力(収益力)
■損益計算書では、段階毎に以下の5つの利益が示されていますが、企業の実力(収益力)を判断する上で、ひとつだけ選択するとするならば、どれがいいでしょうか。
(1) 売上総利益
(2) 営業利益
(3) 経常利益
(4) 税引前当期純利益
(5) 当期純利益
解答
2.粗利の話
■損益計算書上から見ることのできる粗(あら)利益についての記述です。正しいと思われるものはどれでしょうか。
a.粗利とは、一般的には売上総利益のことで、売上に対する割合、粗利益率は、会社や取り扱っている商品によってばらばらなのであまり意味はない。
b.粗利とは、一般的には売上総利益のことで、大切なのは、絶対額よりは、売上に対する割合、粗利益率である。これは、主に業種によって異なるので、同業種間の比較は有効である。
c.粗利とは、その会社の最終利益、すなわち当期純利益のことをいう。
解答
3.利益損失の組み合わせ
■損益計算書上、考えられる利益や損失の組み合わせのうちで、以下のもののうち、誤りはどれでしょうか。
(1) 売上総損失ではあるが、営業利益がでている。
(2) 営業損失ではあるが、経常利益がでている。
(3) 経常損失ではあるが、税引前当期純利益がでている。
解答
4.財政状態のチェック
■その会社の財政状態をチェックしたいのですが、まずはなにを見ますか。ひとつ選びなさい。
a.資本金の大きさ
b.資本金に資本準備金、利益準備金をたしたもの
c.資産-負債
解答
5.剰余金のチェック
■会社の良し悪しを判断する場合において、以下の情報の内どれか一つだけを選ぶとするならば、どの情報によるのがよいでしょうか。
(1) 損益計算書の経常利益
(2) 損益計算書の当期純利益
(3) 貸借対照表の剰余金
(4) 貸借対照表の総資産
解答
6.資産と換金価値
■B/Sに計上されている資産は換金価値があるのでしょうか。正しいものを選びなさい。
a.B/Sに計上されているものは、等しく換金価値がある。
b.B/S に計上されているものは、通常は、上にあるものほど換金性が高い。
c.B/S に計上されていることと換金価値とは全く関係ない。
解答
7.支払能力 その1 現金預金を見る
■貸借対照表の現金預金の大きさは何と比較するのが有効ですか?正しいものを選びなさい。
a.現金預金が流動負債を上まわっていれば、その会社の支払能力は高い。
b.株主に対する責任として資本金額だけの現金預金は原則的に持っているべきである。
c.現金預金をいくらもっていても意味のないことだ。
解答
8.支払能力 その2 当座比率を見る
■会社の支払い能力を見る上で以下の指標のうちどれが、もっとも適切でしょうか。
(1) 流動比率
(2) 当座比率
(3) 固定比率
(4) 自己資本比率
解答
9.固定比率、自己資本比率の理解
■銀行から長期の借入れにより、新たに設備投資を行った企業に関し、以下の記述のうち誤っているのはどれでしょうか。
(1) 固定資産が増加するが固定負債も増加するので、固定比率は変わらない。
(2) 負債が増加するので、自己資本比率が小さくなる。
(3) 固定資産が増加するが、自己資本が変わらないので固定比率は大きくなる。
解答
10.負債比率の理解
■銀行借入れでなく、増資により新たに設備投資を行った企業に関し、以下の記述のうち誤っているのはどれでしょうか。
(1) 自己資本比率が大きくなる。
(2) 流動比率はかわらない。
(3) 負債比率はかわらない。
解答
11.売掛金の増加
■取引先の決算書を見てみたら、ここ数年売上増加に伴って、売掛金がどんどん増えています。どういうことが考えられるでしょうか。正しいものを選んでください。
a.売上拡大に伴う売掛金の増大は全く問題ない。
b.無理な拡販をしている可能性があり、要注意である。
c.売掛金は金銭債権だから、その増加や残高と財務の健全性や収益力とは関係ない。
解答
12.棚卸資産の理解
■ 経理担当者の誤りにより、貸借対照表上の棚卸資産の金額が10億円のところ、20億円と計上されてしまいました。その結果として以下の記述のうち正しいのはどれでしょうか。
(1) 正しいものに比べ、売上原価が10億円多く計上され、利益が10億円少なく計上されている。
(2) 正しいものに比べ、売上原価が10億円少なく計上され、利益が10億円多く計上されている。
(3) 正しいものに比べ、売上原価が10億円多く計上され、利益が10億円多く計上されている。
(4) 正しいものに比べ、売上原価が10億円少なく計上され、利益が10億円少なく計上されている。
解答
13.減価償却費の理解
■減価償却費とは、長期間使用される固定資産の費用化を長期に渡り行うものですが、以下の記述のうち誤っているのはどれでしょうか。
(1) 減価償却費は、販売費及び一般管理費として計上される。
(2) 減価償却費は、売上原価として計上される。
(3) 減価償却費は、長期の使用期間に渡り、現金の支出を伴う。
解答
14.固定資産売却損について
■バブル時に購入した土地2億円のものを当期において1億円で売却しました。以下の説明のうち、適切なものはどれでしょうか。
(1) 固定資産売却損1億円が営業外費用の部に計上される。
(2) 固定資産売却損1億円が特別損失の部に計上される。
(3) 固定資産売却損1億円の現金支出が生じる。
解答
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解答:(3)
売上総利益とは売上高から売上原価を差引いた利益であり別名、粗利益ともいいます。会社の本業から得られる利益ではありますが、会社の本業を営むためには、その他にも販売費及び一般管理費が発生しており、その費用を引く前の大雑把な利益と言えます。会社の本業から得られる利益を見るのなら、この売上総利益から販売費及び一般管理費を差引いた営業利益を見るのがよいでしょう。ただし、通常の企業では、本業の他にも、財務的な活動をしており、これを加味したもの、つまり営業利益に受取利息等の営業外収益を加え、支払利息等の営業外費用を差引いたものが経常利益です。この経常利益は会社の本業と財務的な活動を加味した総合的な収益力を示していると言えます。この経常利益に通常の企業活動からは発生しない、臨時的な特別利益や特別損失を加味して算出されるのが、税引前当期純利益であり、ここから法人税等の税金を差引いて算出されるのが、当期純利益です。普通、臨時的な特別利益や特別損失は毎期同じ項目が発生することは少ないので、企業の実力を判断する上では経常利益に着目するのがよいでしょう。
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解答:b
粗利益とは、売上高から売上原価を差引いて得られる売上総利益のことです。この売上総利益を売上高で除すると売上総利益率(粗利益率)が求められます。販売単価を引き下げ、販売数量で勝負をする安売り店などでは、この粗利益率が低くなる傾向があります。また、他社の参入が難しいような、特殊な技術を持っているメーカー等においては、販売単価を引き下げなくとも勝負ができるので、粗利益率が高くなる傾向があります。したがって、業種間によっても異なる傾向になるので、同業種間での比較は有効な指標となります。
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解答:(1)
売上総損失の状態とは売上高よりも売上原価の金額の方が大きい状態であり、すでにこの段階で損失が生じている状態です。これから差引かれるべき販売費及び一般管理費が通常、利益を生むことはないので、営業利益がでることは考えられません。したがって(1)が誤りです。
(2)のケースですが、営業損失が生じていても、これに営業外収益がプラスされ、営業外費用がマイナスされて、経常損益が算出されますので、営業外収益の金額しだいでは、営業損失が生じていても、経常利益が発生します。(3)のケースも同じく、経常損失に特別利益がプラスされ、特別損失がマイナスされて、税引前当期純損益が算出されますので、特別利益の金額しだいでは、税引前当期純利益が発生することになります。
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解答:c
資産-負債=自己資本 となります。
自己資本とは、資本金に資本準備金、利益準備金、その他剰余金を足したものであり、簡単にいってしまえば、負債以外のもの、つまり返済しなくともよいものを表しています。
負債を右辺に移項すると次のようになります。
資産=負債+自己資本
企業は、返済しなくてはいけない負債と返済しなくともよい自己資本とにより資金を調達しその合計額を資産という形で運用を行うことによって利益を上げます。資本金やそれを含む自己資本がいくら大きくとも、その何倍も負債があれば、財政状態はよいものとはいえません。
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解答:(3)
損益計算書から得られる情報は通常一年間に会社がどれくらいの利益を上げたか、その利益はどのような結果により得られたものかを現しているものです。それに対し、貸借対照表の剰余金は会社が設立されてから今日までに獲得された利益の積立額を表しています。この利益の積立額がマイナスの場合は欠損金として表示され、それは、設立時に株主から出資された資本金を食いつぶしていることを表しています。したがって、上記のうちどれか一つの情報を選ぶとするならば、貸借対照表の剰余金の欄を見るのがよいことになります。
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解答:b
B/Sに計上されている資産を大きく分けると、貨幣性資産と費用性資産とに分けられます。貨幣性資産には、現金預金や将来入金されるべき売掛金、受取手形などの金銭債権があります。また費用性資産には、固定資産のように利用を目的としたものや棚卸資産のように販売を目的としたものがあり、これらは、利用された段階で減価償却費や売上原価等の費用になります。固定資産等の費用性資産は利用を目的としているため、購入時点で既に中古品となり換金価値はB/Sの計上額より通常低くなります。また、企業会計原則では、資産の配列は、原則として、流動性配列法によるものとする。となっており、流動性の高い項目、つまり換金性の高い項目から並べることになっています。
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解答:a
利益が十分に出ている企業でも、返済すべき資金がなければ倒産します。キャッシュフロー計算書が注目を浴びているのも、そこに理由があります。それでは、どれくらいの資金をもっていればよいのでしょうか。返済すべき負債は貸借対照表上、流動負債と固定負債とに分けられます。流動負債とは、通常、1年以内に支払わなければならない負債のことをいい、固定負債は1年を超えて支払わなければならない負債をいいます。現金預金が1年以内に支払わねばならない流動負債を上まわっていれば、その会社の支払能力はかなり高いといえましょう。
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解答:(2)
流動比率は以下の算式により、求められます。
流動資産÷流動負債
これは1年以内に返済しなければならない流動負債に対し、1年以内に現金化できる流動資産がどのくらいあるかを示すものです。これも会社の支払い能力を見る指標ではありますが、流動資産の中には、すぐには現金化できない棚卸資産等が含まれており、会社の支払い能力をもっと厳しく見るものとして、当座比率があります。算式は以下のようになります。
当座資産÷流動負債
これは1年以内に支払わなければならない流動負債に対し、換金性の高い当座資産がどのくらいあるかを示すものです。当座資産とは、現金預金、売掛金、受取手形、有価証券です。
通常、流動比率なら200%以上、当座比率なら100%以上がよいとされています。
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解答:(1)
固定比率とは、次の算式により求められます。
固定資産÷自己資本
これは、固定資産を、返済しなくてもよい自己資本によりどのくらいまかなっているかをみるものです。通常、固定資産は長期間の使用により回収されるものであるため、返済の必要がない自己資本でまかなうのがよいとされています。
自己資本比率は、次の算式により求められます。
自己資本÷総資本
これは、総資本のうちどれくらいを自己資本でまかなっているかを見るものです。資金調達は返済の必要のない自己資本でより多くまかなったほうが安全といえます。
銀行から長期の借入れにより設備投資を行うと、貸借対照表の借方の固定資産と貸方の固定負債が増加します。したがって、自己資本は変わらないが総資本は大きくなります。上記の算式にあてはめると、自己資本が変わらずに、固定資産が増加するので、固定比率は大きくなります。また、自己資本は変わらないが、総資本は大きくなるので、自己資本比率が小さくなります。以上より、(1)が誤りとなります。
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解答:(3)
負債比率は次の算式により求められます。
総負債(他人資本)÷自己資本
したがって、増資により自己資本が増加するが、総負債(他人資本)は変わらないので、負債比率は小さくなります。
また、総資本も増加しますが、同じ額だけ自己資本も増加しますので、自己資本比率も増加することになります。
自己資本比率が高い企業は負債比率が低く、自己資本比率が低い企業は負債比率が高くなります。
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解答:b
売掛金の適正額を見るには、売上高との関係で見るのがよいでしょう。期末の売掛金を1月当りの売上高(売上高÷12)で除せば、何ヶ月分の売上高が未回収として計上されているのかがわかります。売上高の金額に対し売掛金の金額が大きくなれば、この数値も大きくなります。回収状況の悪い得意先にどんどん商品等を販売していくと未回収の金額である売掛金もどんどん増えていきます。この得意先が倒産でもしたら、この売掛金は損失として、P/Lに計上されます。収益力が悪化するだけではなく、負債の返済資金も減ることとなり、財務の健全性も悪くなります。
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解答:(2)
売上原価は前期末に売れ残った棚卸資産に当期の仕入を加え、それから当期末に売れ残った棚卸資産を差引くことによって求められます。本来10億円であった差引くべき期末の棚卸資産を20億円差引いており、差額の10億円分少なく、売上原価が計上されることになってしまいました。したがって、売上原価が10億円少なくなった分、利益が10億円多く計上される結果となっています。
設問では経理担当者の誤りによりとしておりますが、利益を捻出するために意図的に棚卸資産の額を多く計上する場合があり、注意が必要です。
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解答:(3)
減価償却費は、購入された固定資産を全額、支出された期の費用とするのではなく使用期間に渡り費用化を行うものであり、購入以後は現金の支出を伴うものではありません。減価償却費が販売費及び一般管理費として計上されるか、売上原価として計上されるかは、固定資産の種類によります。販売製品を製造するために使用された機械等の減価償却費は、製造原価として売上原価の中に計上されますが、本社の建物や備品等の減価償却費は、販売費及び一般管理費として計上されます。
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解答:(2)
2億円で購入したものを1億円で売却したのであるから、差額1億円分の損が生じたことになります。不動産業務を営んでいる企業は別として、通常、土地の購入、売却は頻繁に生じるものではなく、本業の損益には関係のない損益です。また通常営まれる財務的な活動でもなく、臨時的なものであるので、特別損失の部に計上されるものです。
また、購入した時に2億円の現金流出が生じ、売却したときは1億円の現金流入が生じるので、当期に損失が生じたからといって、現金の支出を伴うものではありません。
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