前々回より、所得税基本通達(以下、「所基通」)59-6の概要及び改正に至った事案の概要等についてお伝えしております。今回は最高裁の判決及び判決を受けての改正内容、今後の実務に与える影響についてお伝えして参ります。
✧ 最高裁の判決
「譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものである」とする判例を引用し、本趣旨に照らせば、株式の譲受人の会社への支配力の程度は、譲渡人の下に生じている増加益の額に影響を及ぼすものではなく、譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきであり、少数株主に該当するか否かについても株式を譲渡した株主で判断すべきであるとし、原判決を棄却しました。
✧ 改正の内容
最高裁の判決を受け、株主区分の判定は、譲渡人の譲渡前の議決権割合により判定を行うことが明確化され、本改正にあたりパブリックコメントの結果も以下のように公表されました。
✧ 類似業種比準価額の斟酌割合(パブリックコメントより)
株式を譲渡又は贈与した個人が「中心的な同族株主」に該当するときは「小会社」として株式評価を行いますが、類似業種比準価額の計算上、乗じる斟酌割合については、評価会社が大会社の場合は0.7、中会社の場合は0.6、小会社の場合は0.5となることが明確化されました。
✧ 純資産価額方式における子会社株式の評価方法(パブリックコメントより)
純資産価額の計算上、評価対象会社が子会社株式を保有している場合の子会社株式の評価方法について、評価対象会社が子会社の「中心的な同族株主」に該当するときは、その子会社株式は「小会社」に該当するものとして評価することが明確化されました。
✧ 最後に
本パブリックコメントは所基通59-6に関するものですが、法人税法における非上場株式の時価の算定規定も類似した規定内容であることから、法人税目的の未上場株式の売買においても上述に基づく評価方法が求められると想定されます。
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