非上場株式の相続を巡り、国税側が「伝家の宝刀」と呼ばれる例外規定を使って課税したことを不服とした訴訟で2024年8月、国税側の敗訴が確定しました。通称「伝家の宝刀」、すなわち財産評価基本通達総則6項を適用した相続税の課税について、国税側の敗訴確定は初めてですので注目されています。
✧ 訴訟の概要
非上場会社の代表者が、他社と売却協議の基本合意を締結(予定価格 1株10万5,068円)。
しかし交渉中に急逝。その後、事業を引き継いだ家族が非上場株式の売却を完了しました。
財産評価基本通達では、相続税を算定するための評価手法を細かく定めており、今回の相続人もこの手法で非上場株式を評価し申告しました。一方、基本通達には「評価が著しく不適当」と認められる場合には国税当局が評価しなおすことができるという例外規定(総則6項)が定められています。今回、国税側は売却予定価格と相続税評価額の価格差に注目し、総則6項を適用の上、1株8万373円と主張しました。
✧ 国税側の敗訴確定
6項を巡っては2022年、いわゆる「マンション節税」判決で次の指針が示されました。
☞ 通達評価額と価格乖離があるだけでは6項を適用できない
☞ 租税負担の公平に反する事情がある場合は適用できる
今回の判決でも2022年の指針をベースに判断され、「税負担の回避を目的で売却を行ったとは認められない」「相続人らが税負担を免れさせる行為がない以上、不公平であると判断する余地はない」として、6項適用は違法となりました。
✧ 非上場株式の評価をしてみましょう
非上場株式は一般に価格が分かるものではなく、その評価には特別な手法を使います。思わぬ高額な評価となる可能性もありますので、税理士に相談の上、評価をしてみることをおすすめします。